グーグルは記事泥棒、ウォールストリートジャーナルのニュース記事はGoogle検索に出てこなくなるのか?

NIKKEI NET『ニューズとマイクロソフト、記事検索で提携交渉 グーグルに対抗(11月23日)』より

米メディア大手ニューズ・コーポレーションと米マイクロソフト(MS)がニュース検索で提携交渉に入ったことが22日、明らかになった。ニューズがMSのネット検索事業に協力し、傘下の新聞のニュースを米グーグルの検索から引き揚げる。

ウォールストリート・ジャーナルなど大手メディアを傘下にもつニューズ・コーポレーションが、自社のメディアの記事をGoogle検索に出てこないようにするというニュースです。

欧米メディアによると、ニューズ傘下の企業がMSのネット検索サービス「ビング」にニュースを優先的に提供。グーグルの検索サービスからは読めないようにする。

一方で、ニューズ・コーポレーションはマイクロソフトと提携し、Bingでのみ傘下のメディアの記事が検索で出てくるようになることを検討中のようです。

Googleの独走をよく思っていないマイクロソフトとニューズ・コーポレーションが組むという形ですね。


米ニューズ・コーポレーションといえば、「メディア王」と呼ばれるルパート・マードックが会長をしている会社です。

傘下にはウォールストリート・ジャーナル(新聞)、20世紀フォックス(映画)、FOXテレビジョン(テレビ)といった大手メディア企業がいます。

ルパート・マードック自身はオーストラリア出身で、ニューズ・コーポレーション自体も元々はオーストラリアの会社でしたが、2004年から拠点をアメリカに移しています。

そんな大手メディア企業の会長ルパート・マードックが「グーグルは我々の記事を盗んでいる」と言い、グーグル検索から引き上げる方針を掲げているようです。

NIKKEI NET『マードック会長、グーグル検索で「記事を読ませぬ」』(11月10日)より

米ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長は9日、傘下のメディア企業の記事を米グーグルで自由に検索・閲覧できなくする措置を検討していると明らかにした。

同会長はグループのテレビ番組で、ネット検索サービスを「我々の記事を盗んでいる」と指摘。グーグルについて「ネット検索しても、サイトが見られないようにすればよいのでは」と尋ねられ、「そうしようと考えている」と答えた。

検索エンジンにとって絶対的に必要なこととは、検索した際に出てくるウェブサイトやウェブページです。

これがないと、検索エンジン自体が意味をなしません。

どんなに精度の高い検索技術を持っていても、表示させるコンテンツ、つまり記事がなければ使う意味がないですからね。

今まで、僕の中では「検索エンジンは自分でコンテンツを作らなくても、毎日、無数のコンテンツができていいなぁー」くらいにしか思っていなかったのですが、マードック会長が言うように「我々の記事を盗んでいる」と指摘されると、「それはそれで1つの視点だな」と思ってしまいました。

検索エンジンとしては、中身の濃い信頼性のある記事を検索結果に出したいわけです。

もし、ウォールストリート・ジャーナルの記事がグーグルに表示されなくなったら、大なり小なり検索結果の質が落ちることになります。

つまり、大手メディア企業が運営するサイトの記事は、検索エンジンのブランディングにも貢献していると見ることができます。

検索エンジンで検索しても、個人ブログしか出てこなかったら、多くの人は検索エンジンを使わなくなり、大手メディア企業が運営するサイトに直接ブックマーク経由で飛ぶでしょうからね。

逆に、ウォールストリート・ジャーナルの記事がGoogle検索に出てこなくなったら、かなりページビューは減ることでしょう。

アメリカではGoogleのシェアは60%以上ありますから。

しかし、11月14日にはこんなニュースが。

NIKKEI NET『米ニューズ、グーグルへの配信「中止」 数カ月内にも』(11月14日)より

米メディア大手ニューズ・コーポレーションは数カ月以内にも米グーグルの検索サービスから系列メディア企業のニュースを引き揚げる方針を明らかにした。

ニューズでデジタル部門トップをつとめるジョナサン・ミラー氏が、モナコの業界イベントで「(検索・閲覧できなくするのは)数カ月先、あるいは数四半期先のこと」と話した。

Google検索経由でユーザーがこなくなると、ページビューが減るので、その分、広告費も減ることになります。

それはつまり、減った広告費をカバーする何か新しい施策が必要になります。

新聞サイトでは、1つ考えられるとしたら有料会員ですね。

現段階では、ほとんどの場合、紙の新聞は有料ですが、ウェブサイトは無料です。

しかも、紙の新聞の購読者はどんどん減っています。

なぜなら、ウェブで無料で読めてしまうからです。

このような状況は、新聞社としては良くない状態です。

だから、この状況を打開するには、ウェブサイトを有料にするしかありません。

たとえば、ヤフーオークションを使うには月額350円必要です。

オークションに出品しなくても、買わなくても月に350円とられます。

でも、実際にヤフーで一番使っているのは、僕の場合は圧倒的にヤフーニュースです。

もし、ヤフーニュースが月額350円の有料制になったら・・・?

たぶん、有料でも購読してしまうと思います。

情報量が増えれば増えるほど、信頼性とスピードのあるメディアの重要性は高まります。

そういう意味では、やはり新聞にかなうメディアはないと思います。特に信頼性という意味では。

もし、自分がよく読む新聞社のニュース記事が検索エンジンから出てこなくなったら・・・?

もし、お金を払わないと全文記事を読めなくなったら・・・?

それなりの数の人は有料でも購読するのではないでしょうか?

そして、ニューズ・コーポレーションだけでなく、ニューヨークタイムスやTIME、CNNといった大手メディアもGoogle検索から引き上げたら、すごく大きなルール変更が起こります。

まるで、オセロが白から黒へ一気に変わるように。

大手メディアの記事を検索結果に出すために、検索エンジン会社がメディア会社にお金を払うようになったら、すごい大きなルール変更です。

検索エンジンの収益構造がガラッと変わるでしょう。

今までは「無料でそちらのサイトにアクセスを流してあげていた」でしたが、ルール変更後は「お金を払いますから、そちらのサイトの記事を表示させて下さい」ですからね。

そういう意味では、BingがGoogleからシェアを奪うための施策としては、今回のニューズ・コーポレーションとの提携は、かなり面白い作戦だと思います。

実際に、この提携が実現して、ニューズ・コーポレーション傘下の多くのメディアサイトの記事がBingでしか検索できなくなったら、多かれ少なかれ検索エンジンのシェアに影響を与えるでしょう。

今後の展開に注目です。

マードック―世界のメディアを支配する男
マードック―世界のメディアを支配する男

追伸(2009年12月3日)

米グーグル、有料記事閲覧の回数制限 「ただ読み」批判に対応

インターネット検索最大手のグーグルは1日、同社のニュース検索サービスなどを通じたメディア各社のニュース記事など有料コンテンツ(情報の内容)の閲覧回数を1ユーザー当たり1日5つの記事に制限する新施策を導入すると発表した。メディア各社がこの施策に参加すれば、無料閲覧の回数を制限できる。

グーグルがとうとう対応を始めたようです。

従来の仕組みではグーグルの検索サービスを経由すれば、メディア各社が有料配信する記事ほぼすべてを無料で閲覧できた。グーグルは「優良コンテンツを製作するのが高価だということを承知している」とのコメントを発表した。

グーグル経由なら、有料記事も読めていたんですね。。知りませんでした。。

これなら、マードックに記事泥棒と言われてもしょうがないかもしれません。。

でも、ユーザーが検索経由で有料記事に訪問したとしても、無料では読めないようにメディア側で調整できないのでしょうか?ふとした疑問ですが。。

追伸(2009年12月7日)

マードック氏にグーグルが譲歩 「ネットのルール」はどう変わる

コンテンツレイヤー(ニューズ)の「コンテンツは無料ではない」に対し、プラットフォームレイヤー(グーグル)は「無料に限度を設ける」とまで譲歩したのである。両社の温度差はまだ大きい。それでも、「無料」という風潮を作り出したウェブ2.0の代表企業であるグーグルの譲歩は、非常に象徴的ではないだろうか。

このグーグルの譲歩はかなり大きいことだと個人的には思います。

ルールが変わる。ルールは一定ではない。ルールの変更に対応して、自身も変更できる者のみが生き残り続ける。

こんな言葉を思い出しました。

追伸(2009年12月9日)

なんだか、この件が白熱してきました。

この件に関する、過去のニュースサイトの記事をいくつか取り上げたいと思います。

「優れたジャーナリズムには金がかかる」 グーグルVSマードック(2009年12月2日)

「優れたジャーナリズムには金がかかる」-。メディア大手、米ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長は1日、ワシントンで開かれた会合で、持論であるインターネットでの記事閲覧の有料化の必要性を改めて訴えるとともに、米グーグルなどネット検索大手によるニュースの無料提供を強く批判した。

一方、グーグルはこれを受ける形で同日、新聞社サイトの有料記事について、1日当たり5本までしか全文を無料で閲覧できないようシステム改良を行った、と発表した。

マードック会長はこの日の会合で、個別の会社名こそ挙げなかったもののグーグルなど検索大手が窓口となったニュース提供の仕組みについて、「ジャーナリズムの成果を横取りしており、盗みに等しい」と激しく非難した。

グーグルは「優れた記事を提供する作業が困難で、高価なのは承知している」と述べ、記事の無料閲覧が経営に打撃を与えているとするメディア側の主張に一定の理解を示した。

「グーグルは新聞と協力できる」 CEOが米紙に寄稿(2009年12月4日)

「グーグルは新聞と協力できる」――。インターネット検索最大手、米グーグルのエリック・シュミット最高経営責任者(CEO)は3日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に寄稿し、米メディア業界で高まりつつある自社への批判に反論した。

シュミット氏は、ネット普及に伴う広告ビジネスと情報収集の変化で新聞や雑誌が危機に陥っていると指摘。

グーグルの検索経由で多くのネット利用者が新聞社のサイトを利用しているなどと主張。対立するのではなく「デジタル時代のジャーナリズムの責務を果たすために力をあわせる必要がある」などと訴えた。

グーグルCEOであるエリック・シュミットの言い分も最ものように僕は感じますね。

インターネットの登場でメディアのルールは変わったんだと僕は認識していますので。

ただし、グーグルが新聞社と良い関係を結ばないと、検索結果に出るサイトの質は確実に下がります。

News Corp.がGoogleに宣戦布告――その背景(2009年12月7日)

News Corp.会長兼CEOのルパード・マードック氏はグループのテレビ番組で、ネット検索サービスを「われわれの記事を盗んでいる」と指摘。とりわけ、Googleの検索サービスは同市場でおよそ7割のシェアを占めるだけに、傘下の米紙Wall Street Journal(WSJ)に続いてグループ全体で進める新聞サイトの有料化の大きな障害になるとみているようだ。

欧米メディアの報道によると、News Corp.傘下のメディア企業がMicrosoftの検索サービスに記事を優先的に提供し、MicrosoftがNews Corp.に対価を払う方向で交渉が進んでいるもようだ。

さて、News Corp.、Google、Microsoftといったメジャープレーヤーによる直近の動きを紹介してきたが、本質的なテーマは「ネットにある情報は無料」という意識が広がった中で、はたしてネット記事閲覧の有料化が可能なのか、さらに新聞の電子版をビジネスとしてどう成立させるか、にある。

僕は有料化してほしくないですけど、有料化する価値はあると思いますね。ネットでニュースが読めなくなったら、すごく困りますから。

月300円くらいだったら、払ってしまうと思います。ヤフオクですら、350円ですからね。。最近、ほとんど使ってないのに。。でも、ニュースは毎日見ますからね。

とはいえ、これまで多くの新聞社が電子版を無料として、広告で収入を得る戦略を取ってきた。新聞社が草創期のGoogleやYahoo!の検索サービスに記事を無料提供してきたのも、ネット広告収入の伸びを見込んでいたからだ。しかし、新聞広告と比べて単価が安く、出稿量も当初の目論見とは大きく異なり、ビジネスとしては不十分なことが明らかになった。

特に、不景気になると企業は広告費から削減しますからね。

Yahoo! Japanですら、8〜10月はほとんどディスプレイ広告を取れてませんでしたから。

米ニューズ・マードック氏「記事対価は正当」 ウォール紙に掲載(2009年12月8日)

米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は7日「良質な記事が正当な対価を得るのは当然だ」とする米メディア大手ニューズ・コーポレーションのルパート・マードック会長の主張を掲載した。同氏はインターネット検索大手グーグルを「ただ乗り」と批判。ウォール紙をはじめ、傘下各紙の記事を検索不能にする方針を打ち出している。

一方、グーグルは検索利用者を各サイトに誘導する役割を担ってきたと主張。「新聞に協力する」(エリック・シュミット最高経営責任者)としている。

さて、この件は今後どうなっていくのでしょうか?

個人的にすごく注目しているニュースなので、今後も追伸という形で追っていきたいと思います。